藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
君か!?
金曜日、納品の日がやって来た。

俺は朝玄関で靴を履くと、片瀬くるみを振り返る。

「それじゃあ、行ってくる。無事に納品されたら、車でここに立ち寄るから」
「はい! よろしくお願いします」

片瀬くるみは、目をキラキラさせて俺を見上げた。

「わかりやすいな。ちゃんといい子にしてろよ? はしゃいで滑って転んだら、元も子もないぞ」
「大丈夫です。抜き足差し足でスキップして待ってます」
「いや、スキップするな!」

笑いながら「あとでな」と頭をなでると、「行ってらっしゃい!」と見送られた。

玄関を出てしばらくすると、またしても己の顔がニヤけているのに気づく。

(違うんだ、これは。ほら、人としてにこやかに接している範疇だ。しかも相手は部下だしな。上司として円満な職場環境を……)

そこまで考えてハッとする。

(そうだ、上司としてこれ以上部屋に泊めてはいけない。今日までという話だったし、フォーラムに納品したら、彼女を社宅まで送り届けないと)

そう考えた途端、スッと心が冷めた。

(何を浮かれていたんだ、俺は。部長として評価シートを書く立場にありながら、結果として部下を部屋に泊めていたなんて)

ケガの責任を感じたからとは言え、恋人でもないのに……

(しかも彼女には、心に想う相手がいるんだ)

俺は自分に、目を覚ませと言い聞かせる。

(今夜、彼女を社宅まで送り届ける。それで全て終わりだ)

グッと拳を握りしめ、込み上げる寂しさを紛らわせた。
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