藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「何だこれ、すごく書きやすいな」
文房具がたくさん並ぶブースで、俺はスタイリッシュなボールペンを試し書きする。
いつまでも書き続けたくなるくらい、滑らかな書き心地だった。
「これ、書きやすいですよね。部長、インクの色を3色選んだりもできますよ」
「ほんとだ。これ買おう。インクは赤と黒と青にしようかな」
「私はこのシルバーカラーにします。これ、黒いメモ帳に書くと……ほら! 文字がメタリックに浮き上がるんです」
「おお、すごい」
他にも、バインダーとクリアファイルがセットになったものや、ノートにバンドで留めるペンケース、消せるミニサイズスタンプなど、男の俺は普段目にすることのないアイデアグッズに興味津々だった。
「部長、ワークショップもやりたいです」
手を引かれて、特設コーナーに向かう。
カリグラフィーや花文字、シーリングスタンプなどを実際に体験してみた。
「はぁ、面白かった。部長、つき合ってくださってありがとうございました」
「いや、俺も楽しかった」
「それならよかったです。オフィス文具もたくさん買ったし、仕事で使うのが楽しみ!」
片瀬くるみは満面の笑みで、買ったものを入れたノベルティの手提げを掲げると、腕時計に目を落とす。
「大変! もう2時を過ぎてます。ごめんなさい、部長。お腹空きましたよね?」
「そうだな。じゃあ、何か食べに行くか」
「はい」
ショッピングモールに繋がる連絡橋を渡り、オープンテラスのカフェに入った。
「うーん、迷うな。ホイップクリームのパンケーキも食べたいけど、お昼ご飯もちゃんと食べなきゃ」
「それなら、俺とシェアするか?」
「いいんですか? 部長、そういうのしない派だと思ってました」
「え? そんなのにも派閥があるのか?」
「なんとなく。ちょっとちょうだい、とか言われたら、嫌だって言いそう」
「あー、それは言ったことある」
でしょ?と、片瀬くるみは得意気になる。
「だから部長にはそんなこと言えません」
「俺は君なら別に嫌だとは思わない」
「え? どういう意味ですか?」
「よくわからんが、君がちょっとちょうだいと言ってきたら、どうぞと答えるな」
「どうしてですか? その程度のポリシーだってこと?」
「いや、そもそもそんなところにポリシー持ってないから」
話が逸れそうになりながら、ローストビーフサンドとガーリックシュリンプライス、クラムチャウダーのブレッドスープをオーダーし、二人でシェアする。
「美味しい! 色々食べられていいですね」
「そうだな。なんで今までシェアしなかったんだろう、俺」
「おっ、これを機に働き方改革しますか?」
「いや、なんで働き方よ?」
あはは!と笑う片瀬くるみは、何かが吹っ切れたように楽しそうだった。
デザートにホイップクリームのパンケーキを頼み、幸せそうな笑みを浮かべて食べる。
「はあ、美味しい……。私、好きな服を着て食べたいものを食べるって、よく考えたら久しぶりで」
ええ!?と俺は驚いた。
「何に遠慮してたんだ?」
「ほんとですよね。夢とか憧れとか、幻想を追いかけて背伸びして、そんな自分に酔ってただけなのかな? 仕事ができる女はブラックコーヒー飲んでそう、 みたいな」
「そんな虚勢を張らなくても、君はバリバリに仕事ができる。これからは変なところに気を回さず、好きなものを飲んで、好きな格好をしなさい。あ、酒癖悪いのは勘弁な」
「ふふっ、酔っ払って藤木部長に絡んだりして」
「また社宅まで送っていくのかよ? まあ、運ぶのも慣れたけどな。って、運送会社かよ?」
あははと笑いながら、また片瀬くるみはパンケーキを頬張る。
「部長」
「なんだ?」
「私、中学生の頃からずっとこの髪型なんですけど、本当は伸ばしたいんです」
えっ?と聞き返してから、俺は頬を緩めて頷いた。
「ああ、いいな。似合うと思う」
「ふふっ、そうだといいですけど」
少しずつ自分らしさを見せるようになった片瀬くるみは、笑顔が可愛らしく、俺はいつの間にか見とれてしまっていた。
文房具がたくさん並ぶブースで、俺はスタイリッシュなボールペンを試し書きする。
いつまでも書き続けたくなるくらい、滑らかな書き心地だった。
「これ、書きやすいですよね。部長、インクの色を3色選んだりもできますよ」
「ほんとだ。これ買おう。インクは赤と黒と青にしようかな」
「私はこのシルバーカラーにします。これ、黒いメモ帳に書くと……ほら! 文字がメタリックに浮き上がるんです」
「おお、すごい」
他にも、バインダーとクリアファイルがセットになったものや、ノートにバンドで留めるペンケース、消せるミニサイズスタンプなど、男の俺は普段目にすることのないアイデアグッズに興味津々だった。
「部長、ワークショップもやりたいです」
手を引かれて、特設コーナーに向かう。
カリグラフィーや花文字、シーリングスタンプなどを実際に体験してみた。
「はぁ、面白かった。部長、つき合ってくださってありがとうございました」
「いや、俺も楽しかった」
「それならよかったです。オフィス文具もたくさん買ったし、仕事で使うのが楽しみ!」
片瀬くるみは満面の笑みで、買ったものを入れたノベルティの手提げを掲げると、腕時計に目を落とす。
「大変! もう2時を過ぎてます。ごめんなさい、部長。お腹空きましたよね?」
「そうだな。じゃあ、何か食べに行くか」
「はい」
ショッピングモールに繋がる連絡橋を渡り、オープンテラスのカフェに入った。
「うーん、迷うな。ホイップクリームのパンケーキも食べたいけど、お昼ご飯もちゃんと食べなきゃ」
「それなら、俺とシェアするか?」
「いいんですか? 部長、そういうのしない派だと思ってました」
「え? そんなのにも派閥があるのか?」
「なんとなく。ちょっとちょうだい、とか言われたら、嫌だって言いそう」
「あー、それは言ったことある」
でしょ?と、片瀬くるみは得意気になる。
「だから部長にはそんなこと言えません」
「俺は君なら別に嫌だとは思わない」
「え? どういう意味ですか?」
「よくわからんが、君がちょっとちょうだいと言ってきたら、どうぞと答えるな」
「どうしてですか? その程度のポリシーだってこと?」
「いや、そもそもそんなところにポリシー持ってないから」
話が逸れそうになりながら、ローストビーフサンドとガーリックシュリンプライス、クラムチャウダーのブレッドスープをオーダーし、二人でシェアする。
「美味しい! 色々食べられていいですね」
「そうだな。なんで今までシェアしなかったんだろう、俺」
「おっ、これを機に働き方改革しますか?」
「いや、なんで働き方よ?」
あはは!と笑う片瀬くるみは、何かが吹っ切れたように楽しそうだった。
デザートにホイップクリームのパンケーキを頼み、幸せそうな笑みを浮かべて食べる。
「はあ、美味しい……。私、好きな服を着て食べたいものを食べるって、よく考えたら久しぶりで」
ええ!?と俺は驚いた。
「何に遠慮してたんだ?」
「ほんとですよね。夢とか憧れとか、幻想を追いかけて背伸びして、そんな自分に酔ってただけなのかな? 仕事ができる女はブラックコーヒー飲んでそう、 みたいな」
「そんな虚勢を張らなくても、君はバリバリに仕事ができる。これからは変なところに気を回さず、好きなものを飲んで、好きな格好をしなさい。あ、酒癖悪いのは勘弁な」
「ふふっ、酔っ払って藤木部長に絡んだりして」
「また社宅まで送っていくのかよ? まあ、運ぶのも慣れたけどな。って、運送会社かよ?」
あははと笑いながら、また片瀬くるみはパンケーキを頬張る。
「部長」
「なんだ?」
「私、中学生の頃からずっとこの髪型なんですけど、本当は伸ばしたいんです」
えっ?と聞き返してから、俺は頬を緩めて頷いた。
「ああ、いいな。似合うと思う」
「ふふっ、そうだといいですけど」
少しずつ自分らしさを見せるようになった片瀬くるみは、笑顔が可愛らしく、俺はいつの間にか見とれてしまっていた。