没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています

2章 近従としての距離

侍女としての生活は、やはり皇太子殿下の身の回りの世話から始まった。

「湯浴びをする。用意しろ」

「はい」

短く答え、急いで浴室へ向かう。

湯を張り、温度を確かめ、香りのよい油をほんの少し垂らす。

(落ち着いて……ただの仕事よ)

そう言い聞かせながら、準備を整えた。

「……できました」

「入る」

振り返った、その瞬間だった。

「……っ」

思わず息を呑む。

目の前にあったのは、何の遠慮もなくさらされた皇太子の素肌だった。

(う、うそ……)

視線を逸らそうとするのに、なぜか一瞬だけ動けない。

鍛えられた体。無駄のない筋肉の線。

湯気の中で、現実味が薄れるほどに整っている。
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