没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
その後ろを、私は慌てて追いかける。

(やっと終わった……)

先ほどの出来事を思い出すだけで、まだ顔が熱い。

けれど、侍女の仕事はこれで終わりではない。

むしろ――ここからが本番だ。

「おい、俺の今日の予定はどうなっている?」

椅子に腰を下ろしながら、殿下が問いかける。

「本日は、午前中に執務を。午後から隣国からの使者が参ります」

用意していた書類を広げながら、できるだけ平静を装って答える。

「……はあ。今日も働きづめか」

小さくため息をつく姿は、どこか年相応で――

あの威圧的な皇太子とは、少し違って見えた。

「午後になったら、お茶を淹れてくれ」

「はい。……って、まさか」

言いかけて、はっとする。

まさか――
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