没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
誰一人として、口を挟もうとはしない。

(……明らかに違う)

扱いが、違いすぎる。

普通の侍女なら、ここまで直接関わることはないはずだ。

湯浴びにしろ、執務にしろ――こんな近くにいること自体が、異例なのだ。

(絶対、からかわれてる……)

そう思わずにはいられない。

視線を戻すと、殿下は書類に目を落としながらも、どこか楽しそうに口元を緩めていた。

「失敗するなよ」

さらりと言われて、胸がきゅっと締まる。

「……努力いたします」

悔しいけれど、逃げることはできない。

その様子を見て、彼は小さく笑った。

「そうだな。期待している」

その一言が、妙に重く響く。

ただのからかいのはずなのに――

なぜか、“試されている”ような気がした。

(……やるしかない)
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