没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
令嬢達のひそひそと交わされる声は、あえて隠そうともしていない。

耳に入らないふりをしても、言葉は鋭く胸を刺した。

かつては同じように笑い合っていた令嬢たちも、今は距離を置く。

誰もが、没落する家には近づきたくないのだ。

(……これで、終わり)

ドレスの裾を軽く摘みながら、ゆっくりと息を吐く。

この夜が終われば、もう夜会に招かれることもない。

華やかな世界とは、ここで決別だ。

それでも――ふと、視線を上げる。

遠く、ひときわ目を引く存在があった。

高貴な立ち姿。周囲の空気さえ変えてしまうような静かな威圧感。

誰よりも堂々としていて、誰よりも孤高。

皇太子、アルヴィオン。

(……ああ)
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