没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
最初から、私にしかさせる気がない。

その事実に気づいてしまい、余計に落ち着かなくなる。

――そして、午後。

私は他国の使者の前で、紅茶を淹れるという大役を果たした。

(よかった……)

失敗しなかった。

それだけで、力が抜けそうになった。

そして、すべてが終わった後。私はようやく一息つこうとした、その時だった。

「執務室に、決裁書を持って来い」

「い、今からですか!?」

思わず声を上げる。

つい先ほどまで緊張の中にいたのに、休む間もない。

「お前の役目だ」

あっさりと言い切られる。

「……はい」

もう逆らう気力もなく、素直に頷くしかない。

「俺のことは全部、おまえがやれ」

その言葉は、命令のはずなのに――なぜか、特別な意味を持って響いた。

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