没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
「……っ」

背後から、低い声。

振り返るよりも早く、腕を引かれた。

気づけば、後ろから抱きしめられている。

「で、殿下……!」

驚きで体が強張る。

けれど、その腕は強引ではなく、逃がさないようにしながらも、どこか優しかった。

「寂しいか。俺と離れるのは」

耳元で囁かれる。

心臓が大きく跳ねる。

(違う……そんなこと……)

否定しようとして、言葉が出てこない。

代わりに、また涙が滲んだ。

「……おまえ、俺のことが好きだろ」

「ひっ……!」

息が止まる。

あまりにもあっさりと、言い当てられた。

隠していたはずなのに。気づかれていないと思っていたのに。

言葉にされた瞬間、逃げ場がなくなる。
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