没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
その一言に、息が止まる。

意味を理解するより先に、鼓動が速くなる。

「……少しは自覚しろ」

耳元で落とされた声は、どこか甘く――

そして、逃げ場を与えない響きを持っていた。

翌朝。まだ薄暗さの残る中庭に、私は立っていた。

皇太子殿下はすでに準備を終えている。

いつもの豪奢な衣装ではなく、町人風の簡素な服。

それでも、隠しきれない気品があった。

(やっぱり……目立つ)

そう思いながら、私は一歩前に出る。

「どうした、おまえ」

振り返った殿下の視線が、私の姿を捉えた。

一瞬、言葉が止まる。

私は、ドレスではなく――動きやすいパンツスタイルに身を包んでいた。

「私も、同行します」

はっきりと告げる。

次の瞬間――
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