没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
ベッドは、一つしかなかった。

言葉に詰まる私の背後から、すっと腕が回る。

「構わないだろう」

「で、殿下……」

背中越しに伝わる体温に、息が浅くなる。

「どうせ、いつかはこうなる運命だったんだ」

低く囁かれる声。

逃げることも、拒むこともできなかった。

ゆっくりと振り向いた瞬間、視線が絡む。

あの夜会で見上げた時とは違う――近くて、逃げ場のない距離。

「殿下……」

名前を呼ぶより先に、唇が触れた。

優しく、確かめるような口づけ。

心臓が、壊れそうなくらい速く打つ。

「一緒に踊った時――思った」

額が触れ合うほどの距離で、彼が囁く。

「……ああ、この人だと」

その言葉に、胸がいっぱいになる。
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