没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
「俺から離れるな」

再び、唇が重なる。

「ずっと一緒だ。リゼリア」

その声は、命令のようで――どこまでも甘かった。

その夜。私は初めて、自分が誰かに求められていると知った。

「リゼリア……」

耳元で、低く甘い声が落ちる。

吐息が触れるだけで、身体の奥がじんわりと熱くなる。

重なる体温。逃げ場のない距離。

「んっ……」

思わず小さく声が漏れる。

「……初めてか」

その問いに、私は小さく頷いた。

次の瞬間、そっと唇が重なる。

優しく、確かめるような口づけ。

「なるべく、ゆっくりにする」

その言葉どおり、彼は焦ることなく、静かに距離を縮めてくる。

触れられるたびに、心までほどけていくようで――

(こんな……)

知らなかった。

誰かにこんなふうに大切にされる感覚を。
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