没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
耳元で続く。

「離す気はない」

抗う理由なんて、もうどこにもなかった。

私はただ、その腕の中で――静かに目を閉じた。

宮殿に戻ってからというもの――

アルヴィオン様は、私を決して一人にしなかった。

「来い」

それが、口癖のようになっている。

「は、はい」

呼ばれるたびに返事をして、私はその後を追う。

最初に連れて行かれたのは、花園だった。

色とりどりの花が咲き誇り、柔らかな風が吹き抜ける。

静かで、穏やかな場所。

「綺麗だろう」

「はい……とても」

思わず見とれてしまう。

その隣で、アルヴィオン様は花ではなく――私を見ていた。

「おまえの方が、よほど目を引くがな」
< 43 / 100 >

この作品をシェア

pagetop