没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
そして、次に連れて行かれたのは――執務室だった。

「ここにいろ」

「えっ……」

書類が山のように積まれた机の横に、当然のように立たされる。

「殿下、私がここにいては……」

「問題ない」

あっさりと言い切られる。

「茶を淹れろ。それから、ここに座れ」

示されたのは、彼のすぐ隣。

完全に、側近の位置だった。

(こんなところに……)

戸惑いながらも、言われた通りに動く。

紅茶を淹れ、そっと差し出す。

そのまま隣に腰を下ろすと、距離が近すぎて落ち着かない。

書類に目を落としているはずの彼の視線が、時折こちらに向けられているのが分かる。

「殿下……仕事に集中なさってください」

思わず言うと――

「している」

即答だった。けれど次の瞬間、手首を掴まれる。
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