没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
「きゃ……」

軽く引かれ、そのまま体が寄せられる。

「こうしていても、問題ない」

「問題あります……!」

小さく抗議するが、彼はまったく気にしていない。

むしろ、どこか楽しそうだった。

「おまえがここにいると、捗る」

「……え?」

思わず顔を上げる。

「逃げないからな」

その一言に、胸が大きく揺れる。

逃げるつもりなんて、最初からなかった。

それでも――

そんなふうに言われると、心が強く締めつけられる。

「だから、ここにいろ」

静かに告げられる。

それは命令でありながら――

どこか、願いのようにも聞こえた。

(……もう)

気づいてしまう。

私はもう、ただの侍女ではいられない。
< 46 / 100 >

この作品をシェア

pagetop