没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
アルヴィオン様は、何でもないことのように答える。

「名前を聞いているのではありません」

リアン様の声は、抑えてはいるものの、明らかに厳しい。

「公務に支障が出ます」

「出ていない」

即答だった。迷いのない言葉。

「ですが――」

「皇太子妃の代役だ」

その一言に、空気が変わる。

(……え?)

思わず顔を上げる

今、なんと――

「そんなものは、侍女に務まりません」

リアン様の声が、さらに低くなる。

「なぜだ」

アルヴィオン様は、椅子に背を預けたまま、視線だけを向ける。

「リゼリアは公爵令嬢だ。歴史もマナーも一流だ」

はっきりと言い切る。

(そんな……ふうに思ってくれていたなんて)

胸が、強く揺れる。
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