没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
そんなふうに評価されたことなんて、今までなかった。

「それでも、特別扱いはできません」

リアン様は一歩も引かない。

「宮廷には規律があります」

「……あいつだけは許す」

静かな声だった。

だが、その中にあるものは――明確な意思。

リアン様が、わずかに眉をひそめる。

「皇太子殿下」

諫めるような響き。

それでも――アルヴィオン様は、動じなかった。

ゆっくりと立ち上がる。

そのまま、こちらへと歩いてくる。

「……え?」

戸惑う間もなく、手を取られた。

ぐい、と引き寄せられる。

「殿下……」

小さく名前を呼ぶと、彼は一切迷いのない目で言った。

「こいつは、俺の側に置く」

その言葉は、宣言だった。
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