没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
誰に対しても、覆させない意思。

(……どうして)

ただの侍女のはずなのに。

ここまで言い切る理由なんて、ないはずなのに。

けれど――その手は、離されなかった。

強く、確かに繋がれている。

リアン様はしばらく黙っていた。

やがて、深く息を吐く。

「……そこまで仰るのでしたら」

視線が、私に向けられる。

鋭く、見極めるような目。

「リゼリアにも、それ相応の覚悟を持っていただきます」

その言葉に、背筋が伸びる。

「中途半端な立場は許されません」

「はい……!」

思わず強く頷く。

もう、引き返せない。

そう分かっていた。

すると――

隣で、アルヴィオン様がわずかに口元を緩めた。

「最初から、そのつもりだ」

その声は静かで――けれど、どこまでも揺るがなかった。
< 50 / 100 >

この作品をシェア

pagetop