没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています

6章 結婚話という障害

ある日――宮殿に、父がやってきた。

「リゼリア」

懐かしい声に、思わず振り返る。

「お父様……!」

少し痩せたように見える姿に、胸が締めつけられる。

それでも父は、いつものように優しく微笑んでいた。

「おめでとう。やっとおまえにも、結婚話がきたぞ」

「え……?」

思わず言葉が止まる。

(私に……結婚話?)

頭が追いつかない。

「皇太子殿下の侍女をしているところを見初めたのだとか」

父はどこか誇らしげだった。

「公爵家からの申し出だ。これ以上ない良縁だろう」

(そんな……)

胸の奥が、ざわつく。

喜ぶべき話のはずなのに、どうしても――

「お父様……あの、私……皇太子殿下と……」

言いかけて、言葉が止まる。
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