没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
一瞬、動きが止まる。

けれど、すぐに応えるように抱き寄せられる。

その温もりに、また涙がこぼれそうになる。

唇が離れた瞬間、私は震える声で言った。

「結婚話が、決まったんです」

「……え?」

彼の表情が、はっきりと変わる。

驚きと――理解できない、という色。

「どうして……結婚話が来るんだ!」

声が強くなる。

初めて見る、動揺。

「侍女をしていたところを、見初めてくれたんです」

自分でも、どこか他人事のように聞こえる言葉。

その瞬間――ぐい、と強く引き寄せられた。

「そんなの、許せるか!」

耳元で響く声が、震えている。

「お前は、俺の――」

言いかけて、止まる。
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