没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
でも私には、細やかな不安があった。

「でも……もし」

言葉が、震える。

「子供ができたら……どうするんですか」

その問いに、彼はまったく迷わなかった。

「嬉しいことだ」

あまりにも、あっさりと。

「君を、堂々と俺の妻にできる」

「そんなこと……」

現実は、そんなに簡単じゃない。

そう分かっているのに――

「俺には、リゼリアしかいない」

はっきりと、言い切る。

逃げ場のない言葉。

そのまま、そっと抱き寄せられる。

「だから、離す気はない」

耳元で囁かれる声は、甘くて――

そして、どこまでも強かった。

(どうして……)

こんなふうに言われたら。

もう、抗えるはずがない。

私はただ――その腕の中で、目を閉じるしかなかった。
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