没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
結婚前の娘の元へ、皇太子が毎晩のように通う――

それは、父にとって不安でしかなかった。

「皇太子殿下」

静かに頭を下げる父の声は、どこか張り詰めていた。

「娘を想っていただくことは……これ以上、おやめください」

その言葉に、空気が一瞬で冷える。

「どうしてだ」

アルヴィオン様は、まっすぐに父を見た。

逃げることなく、ただ真っ向から。

「娘は……公爵家の子息と結婚するのです」

父の声は震えていた。

「それなのに……このような関係を続ければ」

言葉を飲み込みながらも、続ける。

「もし、殿下のお子でもできたら……公爵家になんと申し開きすればよいのか……」

苦しそうに、視線を落とす。

父として、当然の言葉だった。
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