没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
だが――

「子ができたなら」

アルヴィオン様は、一切迷わず言った。

「その子は、王家の人間だ」

その一言に、父が顔を上げる。

驚きと、戸惑いと――そして、恐れ。

「リゼリア嬢と共に、俺の家族として迎える」

静かに、だがはっきりと告げられる。

(……殿下)

胸が、強く揺れる。

けれど父は、首を振った。

「そんな……お許しください」

声が、かすれる。

「もうこの家に、皇太子妃を出す余裕などありません」

それは、誇りではなく――現実だった。

没落した家に、そんな責任は負えない。

「これ以上、娘の未来を……不確かなものにしたくないのです」

その言葉に、痛みが滲む。

父の願いは、ただ一つ。私の幸せだった。
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