没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
その一言で、場の主導権が完全に移る。

レオニー公爵が言葉を失う。

「リゼリアも……」

ようやく絞り出すように続ける。

「私という婚約者がいながら……」

その声には、傷ついた色があった。

私は何も言えない。

ただ、布の中で息を潜めることしかできなかった。

その時――アルヴィオン様が、ゆっくりと立ち上がった。

「彼女は悪くない」

はっきりと、言い切る。

迷いのない声。

「すべては、俺の責任だ」

その背中が、私の前に立つ。守るように。

「悪いが――」

視線がまっすぐにレオニー公爵を射抜く。

「リゼリアは、皇太子妃になる」

その言葉に、空気が凍りついた。

「皇太子殿下ともあろうお人が……」
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