没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
その姿は、宮殿で見る皇太子とは違い、どこか柔らかかった。

「いいえ。お礼を申し上げるのは、こちらの方でございます」

父もまた、深く頭を下げる。

そのやり取りを見ながら、私は胸の奥が静かに揺れるのを感じていた。

やがて、私はセルティスとともに一歩前へ出る。

「娘ばかりか、息子にも温情をかけていただき……言葉もありません」

父の声には、これまで見たことのないほどの安堵が滲んでいた。

セルティスは嬉しそうにアルヴィオン様の元へ駆け寄る。

「僕、一生懸命お仕えします!」

まっすぐな瞳。

それを受け止めるように、アルヴィオン様は静かに頷いた。

「期待しているぞ、セルティス」

その一言に、弟の顔がぱっと明るくなる。
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