没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
(……本当に、この人は)

人の心を掴むのが上手い。

自然に、距離を縮めてしまう。

その姿を見つめながら、胸が締めつけられる。

嬉しいはずなのに――どこか、苦しい。

やがて食卓には、久しぶりに豪勢な料理が並んだ。

笑い声が戻った家。温かな空気。

それはまるで、失われた時間を取り戻したかのようで――

けれど私は、ただ一人。

その幸せの中で、静かに揺れていた。

夜になると――

いつものように、アルヴィオン様は私の元へやってきた。

「これで、君を愛することにとやかく言う者はいない」

その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

私は、迷いなく彼に抱きついた。

「私も……もう迷いません。あなた様を愛することを」
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