没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
夜会の時と変わらぬ、静かな威圧感。

だが今は、より近く、より現実としてそこにいる。

私は慌てて頭を下げた。

「お呼びと伺い、参りました」

「……来たか」

低く落ち着いた声が、広間に響く。

彼はゆっくりとこちらを見下ろした。

「奉公先は見つかったか」

不意の問いに、思わず顔を上げる。

「え……さすがに、この数日では見つかりません」

正直に答えるしかない。

まだ、何も決まっていない。

これからどう生きていくのかも。

「そうか。まだ見つかっていないか」

その言い方に、どこか含みがあるように感じた。

ほんのわずかに、目が細められる。

(……?)

次の瞬間――

「だったら、俺の侍女として仕えてもらうことにしよう」
< 8 / 100 >

この作品をシェア

pagetop