没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています

9章 プロポーズ

そして――

ヴァルディス公爵である父は、王宮へと呼び出された。

謁見の間。

高い天井、静まり返った空気。

その中央に、国王と王妃が座している。

父は深く頭を垂れた。

「ヴァルディス公爵。この度呼んだのは他でもない」

国王の低く響く声が広間に広がる。

「皇太子が、そなたの令嬢を強く所望しておる」

「はっ……!」

父は、さらに頭を下げた。

「身に余る光栄にございます」

その声は落ち着いていたが――

内心では、すべてを理解しているはずだった。

(……知っているくせに)

私は思わずそう思ってしまう。

だが、それが“形式”なのだ。

王家と公爵家としての、正式なやり取り。
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