没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
私は彼の腕の中で、そっと身を寄せた。

二人の間に、隙間なんてなかった。

心も、体も――すべてが、ひとつに重なっている。

「もう、私……」

言葉が途切れる。

けれどアルヴィオン様は、優しく頷いた。

「いいよ。今夜は初夜だ」

そっと抱き寄せられる。

「朝までこうしていても、誰にも咎められない」

その声に、すべてを委ねたくなる。

重なる温もりが、ゆっくりと満ちていく。

「ああ……」

息が揺れる。

「いいな」

耳元で、低く囁かれる。

「初夜から、俺を夢中にさせるなんて」

その言葉に、現実が遠のいていく。

ただ、この人といることだけが、すべてになる。

「……夢みたい」

ぽつりと呟くと、彼は静かに笑った。
< 99 / 100 >

この作品をシェア

pagetop