愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
小鹿美羽をはじめとする広報部の面々が複数人で自宅に押し寄せるので、俺ひとりで完璧に対処するのは難しいだろう。
小雪本人には外出してもらい、撮影スタッフが来る前に彼女が生活している痕跡は消しておくつもりだが、万が一と言うこともある。
「了解です。……あ、もうこんな時間ですね。社長、十四時半からは銀行との打ち合わせですよ」
「頭に入ってるし、俺はいつでも行ける。お前が食べ終わるのを待っていたんだ」
新町はテーブルに視線を落とし、慌てて小鉢に残っていた漬物をかきこむ。
皿が綺麗になると、トレーを手にして忙しなく立ち上がった。
「それじゃ仲真さん、僕たちは急ぎますのでこれで失礼します」
「は、はい。お疲れ様です」
食器を返却口に返しに行く新町を見送りつつ、俺も椅子から腰を上げる。そのままテーブルを離れようかとも思ったが、少し悩んでから小雪の方を振り返った。
「さっきの……詳しくは帰ってから話す。ただ、きみに負担はかけないようにするから」
食堂は空いているとはいえ、社内で小雪に対してこんな風に接するのはよくないとわかっている。
社長の俺が、人事部のいち社員となにを話しているのかと、変に思われる可能性もある。