愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「俺のイメージからかけ離れた心情ばかりだから、仕方がないだろう。それと、三番目の話に関しては勝手な脚色を加えるな。決して実際に想像したんじゃない、しそうになったというだけだ」
彼女の生活に無関心だった頃は、バスルームをどう使っているなんて気にしたこともなかったのに……あの夜は、ちょうど彼女の手料理に心をほどかれたタイミングだったからか、急に小雪を女性として意識してしまったらしい。
しかし、断じて変な想像はしていない。
「どっちでもいいけど、くれぐれも来週の撮影、気をつけろよ。広報部の小鹿美羽には厄介な噂しかない」
「厄介な噂……?」
「ああ。あの容姿とコミュ力、氷室エクスプレスへの出演もあって結構色々な男性から誘いがあるらしいが、そのすべてに『私は氷室社長の妻なることにしか興味がないの』と答えているらしい」
嫌悪感から思わず寒気を覚えた。
彼女の好意には気づいていたものの、他人の前で勝手に俺の名前を出して図々しい野望を宣言していたとは……。
「いっそ、小雪の存在を公にできれば楽なんだけどな」
「でもそれは彼女が望んでないんだろ?」
新町の言うとおりだ。
小雪が俺と結婚したのは、父親のため。会社での自分の立場を守るのを第一に考え、極秘結婚を望んだ。俺だってそれを承知で契約を結んだはずだ。
「そうだな。とにかく小鹿の前ではボロを出さないようにする。それじゃ、お先に」
「……お疲れ様でした、社長」
新町はまだなにか言いたげな顔はしていたが、最後は秘書らしく俺を見送った。