愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 彼女は日頃から派手に表情が変わるタイプではないが、その横顔にどこか寂しげな色を感じ取り、俺はゆっくりと歩み寄る。

「どうした? 外ばかり見て」
「……すみません、雨を見ていただけでなんです。食事にしますよね。今、飲み物を」

 小雪は俺の問いかけには答えず、キッチンに向かおうとする。俺は無意識に、彼女の腕を掴んで引き留めていた。

「そんなに俺と話したくないか?」
「え?」

 小雪の丸い瞳に、焦れたような俺の表情が写っている。

 言ってしまってから、今のは少し拗ねた子どものようだったかもしれないと軽く恥じ入る。

 俺は一度咳払いをし、小雪の目を真っすぐに見つめた。

「一緒に暮らしていれば、きみの様子がいつもと違うことくらいわかる。だから、もっと、その……心の内を見せてほしい。気の利いたアドバイスができる保証はないが、話せば楽になることもある」
「遼河さん……」

 小雪は俺の名前を呟いた後、なにか考えるように長い睫毛を伏せる。

 けれど、すぐに意を決したように顔を上げる。

「じゃあ、食事をしながら聞いていただけますか? 暗い話ではありますが」
「なんだって話せ。……夫婦だろ」

 あくまで契約上の関係だという事実は、今の俺にはどうでもよかった。小雪は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに穏やかに微笑む。

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