愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「ありがとうございます」
小雪には、この家で、俺のそばで、こうして笑っていてほしい。
なぜそんな欲求が湧いたのかはわからないが、俺はその時確かにそう思った。
テーブルの方へ移動すると、小雪の作ってくれた、ごろごろとした野菜と鶏肉が入った、家庭的なクリームシチューを食べながら、彼女の話を聞いた。
テレビもなにもつけていない部屋には、降り続く雨の音が静かに響いている。
「遼河さんには、亡くなった母についてあまり話していませんでしたよね」
「ああ。お父さんとふたりで会った時に、交通事故で……とは聞いたが」
小雪がシチューのスプーンを置き、こくんと頷く。
それから、窓の方へと視線を投げた。
「こんな雨の日でした。朝は降っていなかったのに、私が学校から帰る頃になって、急に降り出したんです」
小雪が語った話はこうだった。
傘のない彼女は仕方なく、着ていたパーカーのフードを被って下校した。しかし、家に着いた時に玄関の鍵が開いておらず、あれっと思う。
いつもならお母さんが家にいて、鍵は開いていからだ。
直後に傘立てに自分とお母さんの傘がなくなっていることに気づき、もしかしたら自分を迎えに出ているのではと思いつく。