愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 でも、それなら途中でばったり会ったはず。いつもと同じ道で帰ってきたのに、どうしてお母さんと会わなかったのだろう――。

 ぼんやりそう思っているところに、お父さんが血相を変えて帰宅した。

『小雪、病院へ行くから急いで準備しろ。お母さんが事故に遭った』
『え……? 怪我、してるの?』
『……とにかく行こう。お母さんが待ってる』

 小雪は嫌な予感がした。というのも、帰宅途中に、明らかに交通事故が起きたと思われる交差点を通ってきたからだ。

 倒れたバイクと救急車、パトカーが集まるそこは、物々しい雰囲気だったという。

「父は連絡を受けて知っていたんだと思いますが、病院に着いた時にはもう……母は話せる状態ではありませんでした。事故の原因は、バイクが交差点を曲がる時に、雨で濡れたマンホールの上を通ったことによるスリップだったそうです」

 ……事故の原因は、雨。それを聞いて、納得する。

 先ほど俺が帰宅した時の小雪のホッとした表情も、窓の外を眺めて寂しげな目をしていたのも、お母さんの事故を無意識に思い出していたのが原因だろう。

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