愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「顔に多少の傷はありましたが、霊安室で眠っているように目を閉じている母の顔を見ても、私はなにがなんだかわからなりませんでした。……でも、父がすぐに母に寄り添って、絶叫するように声を上げて泣き始めたんです。それで、母はもう目を覚まさないんだって、子どもながらに理解しました」
あの、強く逞しい印象の小雪のお父さんが、そんな風に……。想像しただけでも、胸を引き裂かれるようだ。
「運転手の男性は違反をしていたわけでもなく、ご自身も大きな怪我をされていたのに、私たち家族のところに何度も謝りにきてくれました。だから、恨んではいません。……でも」
小雪の声が頼りなげに震える。
「事故の後、母の遺体が私の傘だけは絶対に離すまいとするように握りしめていたって、後から警察の方が話しているのを聞いてしまって……たまらなくなりました。だから、今でもこんな雨の日は、時々思うんです。私が朝からちゃんと傘を持って学校に行っていたなら、母は事故に遭わずに済んだんじゃないかって。間接的に母を死に追いやったのは自分なんじゃないかって。こんなこと考えても仕方がないって、わかっているんですけどね」
小雪はそう言って、明らかに無理をしているとわかる、ぎこちない笑顔を浮かべた。
そのつらそうな表情を見ていたら、考えるより先に口が動いていた。