愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「生産性とかあんまり必要ないこういう部署では、仲真さんみたいな真面目ちゃんは損するよ。もっと適当にいこうよ適当に。正直、仲真さんみたいな人がオフィスにいると息が詰まるんだよね」

 勝瀬さんはそう言って、ネクタイを緩める仕草をした。

 私が彼を苦手なのと同じように、彼もまた私のことが苦手なようだ。空気を悪くして申し訳ない気持ちもあるが、真面目なことが悪いとは思えない。

 たとえ高田さんが私に面倒な仕事を押し付けたんだとしても、それを私まで投げ出してしまったら、会社説明会の資料はどうなるの? 

 忙しい中、わざわざ時間を空けてくれた社長には、なんて説明するの?

 たとえ損な役回りでも、誰かがやらなければならないのだ。

「……そろそろ社長室に行かなければならないので失礼します」

 言いたいことはぐっと飲み込み、勝瀬さんに小さく頭を下げてプリンターの方へ向かう。

 プリンターの排紙トレーから〝大して役に立たない資料〟を回収すると、ボイスレコーダーや社用カメラを持って、人事部のオフィスを出た。

 エレベーターに乗って高層階にある社長室へ向かう途中、学生時代の記憶がぼんやりと頭の中を巡る。

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