愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 勝瀬さんのように、私を『真面目ちゃん』とか『風紀委員長』とか揶揄する人たちは、学生の頃から一定数周囲に存在していた。

 私をそう呼ぶ人たちはだいたいクラスの目立つグループに属していて、その発言による影響力が大きい。

 仲真小雪は、真面目な発言で調和を乱す面倒な存在。

 そういう空気を作り出す集団の中にいるのが苦しくて、言いたいことがあっても我慢するようになったし、誰とも群れない方が気楽だった。

 当然人間関係も広がらず、心から友達と呼べる存在ができたのは大学生になってから。

 社長へのインタビューを無事に終えたら、夜にでもその友達に電話して色々と話を聞いてもらう予定だ。勝瀬さんの発言も含め、日頃の愚痴をたっぷりと。


 社長室のあるフロアに到着すると、目的の扉の前に秘書の男性がいた。

 歳はおそらく社長と同じ三十代前半。すっきりと短い黒髪に、三角眉毛と丸い瞳が親しみやすい印象で、緊張していた気持ちが少しだけ楽になる。

「お待たせしてすみません。人事部から参りました仲真です」
「仲真さん、本日はどうぞよろしくお願いします。社長秘書の新町(しんまち)と申します」

 にっこり微笑んだ新町さんが、私と同じくらい深く頭を下げてくれる。声音も穏やかで、とても物腰がやわらかい人のようだ。

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