愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
なんだか親と子が逆になったみたいで不思議な気分だったが、幸せそうなふたりの姿には、見ているだけでこちらまで胸が温かくなる。
それに、彼らのように心から信頼し合っている関係には、やっぱり憧れる。
最近はとくに、私が遼河さんに対して抱く気持ちに、少しずつ変化が訪れているからかもしれない。
たとえば、会社でたまたま遼河さんの姿を見かけたりすると、心が揺れるようになった。
それは、友達や家族に感じる親しみとはまた別の、なんともいえないそわそわ感。
今までの私は苦手な彼を避けるように行動していたのに、その姿が見えなくなるまで無意識に目で追っていることもある。
マカロンを一緒に食べたり、私の作った料理を食べながら、お気に入りの車について話して聞かせてくれたあの日から、結婚生活の中にがほんのちょっと優しい空気が流れるようになってきたせいかもしれない。
数日前には、母のことを思い出して暗い顔をしていた私に、遼河さんはすぐに気づいてくれて――。
『一緒に暮らしていれば、きみの様子がいつもと違うことくらいわかる。だから、もっと、その……心の内を見せてほしい。気の利いたアドバイスができる保証はないが、話せば楽になることもある』
まさか、彼がそんな優しい言葉をかけてくれるなんて思ってもみなかったから、驚いたけれど嬉しかった。