愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「それではどうぞ中へ」
「はい、失礼します」

 新町さんが重厚なドアを開け、私を室内へ促す。

 遠慮がちに足を踏み入れた社長室はモノトーンのインテリアが多く、モダンな雰囲気。

 氷室社長は、窓辺に置かれた大きなL字デスクで、デスクトップパソコンのモニターを睨んでいた。長めの前髪はかき上げたようにセットされ、理知的で涼やかな目元が見える。

 彼が眉目秀麗であることはもちろん知っていたけれど、眉間に皺を寄せた表情さえ画になっていて、つい視線を奪われる。

「社長、人事部の仲真さんがお見えになりました」
「……ああ。とりあえず座ってて」

 社長は新町さんの言葉に一応反応はしたものの、こちらには一瞥もくれず、画面を見つめたままマウスに添えた手を動かしている。

 なにか大切な仕事の最中なのだろう。新町さんに従い、応接セットの黒いソファに腰を下ろし、テーブルの上に持参した書類やレコーダー、カメラを置かせてもらう。

 数分で、彼が椅子から立ち上がった。

 すらりとした体躯に合ったダークネイビーのスーツ姿は凛々しく、こちらに歩み寄ってくる動作には優雅な気品を感じる。

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