愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
悩むことなく、即答してくれたのが嬉しかった。
フライパンが温まったら、十分に卵液を吸い込んだパンを焼いていく。ジュウ、と音がして、バターと卵、それに砂糖が焦げる甘く優しい香りがあたりに漂う。
「……いい匂いだな」
ボソッと呟いたその声がやけに近い……と思ったら、次の瞬間、するりとウエストに彼の出が回され、後ろから緩く抱きしめられた。
突然の接近にかぁっと頬が熱くなり、心臓が飛び出しそうに暴れる。
「りょ、遼河さん……っ?」
「俺のことは気にせずそのまま続けていいぞ」
「気になりますって!」
いったい、彼はどういうつもりなの?
混乱しながらも、フレンチトーストが焦げてしまうので、彼にくっつかれたままフライ返しでパンをひっくり返す。こんがりといい焼き色がついていた。
「あの、裏も焼けたら離れてください……。お皿、取らなきゃいけないので」
「皿? いいよ、俺が取る」
囁くように言った彼は、ようやくスッと私から離れて、食器棚の方へ移動する。
今のはいったいなんだったの……。
エプロンの上から未だにバクバクと鳴る心臓を押さえ、誰にともなく問いかける。