愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
私は遼河さんの宣伝に誘われてリモコンを操作し、彼の顔が映っているサムネイルを探すと、そのうちのひとつを再生してみる。
『限りある化石燃料から、再生可能エネルギーへ。脱炭素社会を目指し、あらゆる分野の企業がこうしたフェーズに入って久しいですが、氷室エナジーでもその核を担う取り組みを継続しています。そのひとつとして、より先進的な電気自動車やハイブリット車の開発を――』
わ、遼河さんが喋ってる。感動した私は、ついリモコンで音量を大きくした。
いつもそばで見ている人をテレビで見るのって、不思議な感覚。
本人の前ではそんなにジッと見つめられないけれど、テレビの彼ならば目が合うこともないから、眺めたい放題なのはいいかも……。
私は眼鏡のブリッジを押し上げて、画面の中の遼河さんに見とれる。しかし、今回もやはり広報部の小鹿さんが彼の隣をキープしていて、胸に微かなさざ波が立った。
『毎回、動画のコメント欄には氷室社長にあてた応援メッセージやプライベートに関する質問が多く届いているのですが、今日はその中からひとつご紹介しますね』
相変わらず綺麗だし、よどみなく話す姿は堂々としているし……私なんかとは違う世界の人だなと、眩しく思う。
と、同時に、最近影を潜めていたコンプレックスが久しぶりに舞い戻ってくる。自分はああいう一軍の人たちとは違う、日陰者――という、暗めの思考が。