愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 一瞬耳を疑った。約束の時間には、まだ一時間以上も余裕があるのに。

「ど、どうしましょう」

 動揺を隠しきれず、遼河さんに駆け寄って彼の判断を仰ぐ。私よりは落ち着いているが、彼もさすがに険しい表情を浮かべていた。

「新町はなにをやっているんだ……? とにかく、小雪はどこかに隠れてろ。俺が門の前で時間を稼ぐから」
「わ、わかりました」

 お互いの行動を確認すると、遼河さんは外へ出るために玄関の方へ。

 私は外出で使う予定だったバッグを抱えて、バスルームの脱衣所へ逃げ込んだ。内側から鍵がかけられる部屋はここだけなのだ。

 無事に扉の内側に逃げ込んだ私は、カチッと鍵をかけてひと息つく。

 これで、とりあえず私の存在はバレないはず……あ、靴……!

 どうしよう。今から取りに行けば間に合う? でも、万が一玄関で鉢合わせなんかしたら、言い逃れできないし……。

 外の様子を知りたくて、洗面台の脇についている小さな窓を細く開ける。

 しかし、残念ながら窓の向こうは家の北側。庭があるのは家の南側のため、遠くで話し声がしている程度の情報しか得られなかった。

 靴を回収できるかどうか判断がつかず途方に暮れていたその時、バッグの中でスマホが短く音を立てる。誰にも聞かれていないのに、ぎくりとした。

 慌てて消音モードにし、届いたメッセージを確認する。

 遼河さんからだ。

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