愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
【もう隠れたか? 靴なら俺が出る時シューズクロークの奥に放り投げておいたから、安心しろ。あと数分で、撮影スタッフが家に着く】
よかった……。
首の皮一枚で繋がったような心地で、へなへなとその場に座り込む。
【ありがとうございます。私は脱衣所で息をひそめていますので、広報部の方たちがこちらに来ないように誘導をお願いします】
遼河さんにメッセージを返して数分、彼の言った通りに、玄関のドアが開く音がした。
何人かの声とスリッパの足音が近づいてくる。
「いや~、話には聞いていましたがすごい豪邸ですね」
「今日はガレージの撮影がメインですが、家の紹介でもう一本動画が作れそうです」
や、やめてください……。
ここにはあなたたちの知らない同居人が住んでいるので、そっとしておいて……。
やがて集団の気配は通り過ぎ、今度はリビングダイニングの方から声がし始める。
いったん気を抜いてドアの背に身を預けたら、遅れてまた違う人たちの話し声が聞こえてきた。
「社長、一生のお願いです……! 普段寝起きされている私室を撮らせて頂けたら、氷室エクスプレスは史上最高の再生回数を叩き出すと思うんです!」
「ダメに決まっているだろう。プライバシーの侵害だ」
これは、小鹿さんと遼河さん……?
かなり気になる会話なので、つい耳を澄ませてしまう。