愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「じゃあ、バスルームならどうですか? ほんの少し社長の生活を想像できる映像があるだけで、女性視聴者の食いつきが全く違ってくると思うんです」
「バスルームなんてもっとダメだ。きみたち広報部はバズればなんでもいいのか? もう少しましな企画を考えろ」
遼河さんの物言いは厳しいけれど、発言の内容はもっともだ。
彼の甘いマスクを目当てにする女性視聴者ばかりが増えても、イコール氷室エナジーの商品が売れる、というわけでもないだろうし……。
「ごめんなさい……。社長、いえ、遼河さん」
小鹿さんのしおらしい声が、なぜか彼を下の名前で呼ぶ。なんとなく嫌な予感がして、私はごくりと喉を鳴らした。
「本当は、私の個人的な興味だったんです。遼河さんが、どんな家で暮らし、なにを思っているのか。それに、どんな女性が好みなんだろう、とか……」
小鹿さん、なにを言っているの? 今日は広報部の代表として、動画撮影のためにうちに来たんでしょう? それなのに、どうしてそんなプライベートなことばかり……。
「そんなこと、きみに教える義理はない」
「私ではダメですか? もしも今の私があなたの好みからかけ離れているんだとしたら、服や髪型、メイクの趣味だって変えます。それくらい、本気なんです」
小鹿さんの口調は必死だった。
私よりも彼女の方が遼河さんに似合う――そう考えたことが一度や二度ではなかったために、複雑な気持ちが胸に押し寄せる。