愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 小鹿さんは綺麗だ。それは見た目の話だけでなく、自分に自信がある人特有の、キラキラしたオーラを纏っているせいもあるのだろう。

 私は元々目立つのが嫌いだし、言いたいことだって飲み込みがちで、ノーと言うのも苦手。

 それでも最近は、遼河さんに背中を押されるようにして、心の内を言葉にすることも少しずつ慣れてきたところだけれど……小鹿さんのような人には敵わない。

「俺は……」

 遼河さんはなにを言うつもりだろう。聞きたいのと同じくらい耳を塞ぎたいという葛藤に押しつぶされそうだったその時。リビングダイニングの方向でガチャリとドアが開く音がした。

「社長、小鹿さん。皆さんがそろそろ撮影を始めたいと」

 聞こえてきた声は、新町さんのものだった。

「お待たせしてすみません、ただいま参ります」

 小鹿さんがすぐに応じ、ふたりの気配が廊下から移動する。

 遼河さんの口から彼の本音が語られることはなかったものの、小鹿さんの気持ちはおそらく本物。

 たとえ法律上の妻は私でも、ずっと遼河さんの隣にいられる保証はどこにもないのだ。

 ……どうしよう。今、すごく心細い。

 リビングの方では順調に撮影を進めているのだろう。時折にぎやかな声が聞こえて来たけれど、私はひとり、ドアに背を預けたまま膝を抱えていた。

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