愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「もしかしたら、小鹿さんの独断……かもしれませんね」

 あんなに大胆な行動を取る彼女のことだ。遼河さんの私室やバスルームが見たいとも言っていたし、彼のプライバシーを探るため、予定より早く来て隙をつこうと思ったのではないだろうか。

「小鹿美羽、ですか。抜け目のない女性だという情報は前々から得ていたので、あり得ますね。そういえば彼女、撮影前に僕が声をかけるまで、この部屋の前の廊下で社長となにを話していたんですか?」

 ぎくりとして、肩が跳ねる。あまり思い出したくない会話だが、新町さんの耳にも入れておいた方がいいのだろうか。

 でも、個人的な話だし……。

 俯いて唇をキュッと噛んでいると、なにも話していないのに、新町さんは納得したように頷いた。

「仲真さんがそんな顔をされるってことは、まぁ、だいたい僕の想像通りなんでしょう。彼女は前々から、あの手この手で社長に近づこうとしていましたから」
「あの手この手……」

 その中身が知りたいような、知りたくないような……。

 とにかく、彼女ならどんなことでもできそうなので恐ろしい。

「でも、仲真さんが不安に思うことはないですよ。社長は不器用な人ですが、心を許した人にはとことん懐きますから。最もいい例が、ここにいます」

 新町さんはしたり顔でそう言うと、ジャケットの襟を掴んでぴっと正す仕草をした。

 おどけた様子が面白くて、思わずふふっと笑ってしまう。

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