愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「ありがとうございます。ちょっと気が滅入っていたんですが、新町さんのおかげで元気が出ました」
「それはよかったです。そろそろ社長もお戻りになるかと――あ、噂をすれば」
玄関の方で物音がしたので、万が一を考えて私は一旦脱衣所に引っ込む。
「社長、広報部の皆さんは?」
「帰った。……まったく、騒々しくてたまったもんじゃない。もっと俺の生活に密着した動画も取らせてくれとしつこく食い下がられたが、断固拒否した」
「それは確かに迷惑な話ですね」
どうやら、戻ってきたのは遼河さんだけみたいだ。
ふたりの会話を聞いて安心した私は、ドアの陰からそっと廊下を覗いて、遼河さんと目を合わせた。涼しげだった彼の切れ長の瞳が、優しく弧を描く。
「小雪。悪かったな、ずっとこんなところに閉じ込めて」
「いえ。私なら大丈夫です」
本当は小鹿さんとの会話を聞いて結構ダメージを受けていたけれど、さすがにこの場では言えない。
とりあえず否定して微笑んでいたら、横で会話を聞いていた新町さんが、突然私の前に立つ。
「……と、彼女は言っていますが、本当は先ほどまで落ち込んでいたんですよ。でも、僕と話したおかげで元気が出たそうです。今後もご要望があれば、仲真さんの相談相手になるつもりです」
新町さん、どうして遼河さんの前でそんなことを……?
さっきまで落ち込んでいたのも、彼と話して元気が出たのも事実だけれど、今後も相談相手になる、だなんて。