愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「どういうつもりだ? 新町」
「言葉通りですよ、社長。僕の目には仲真さんが潰れてしまいそうに見えたので、精神的に支えて差し上げたいと思いまして」
「必要ない。撮影は終わったんだから、お前の用も済んだはずだ。さっさと帰れ」
ふたりが辛辣な言葉でコミュニケーションを取るのは今に始まったことじゃないけれど、いつものそれとはなんとなく性質が違う気がして、ハラハラしてしまう。
「言われなくてもそうするつもりでしたよ。それじゃ、仲真さん。尊大な夫に嫌気がさした際はぜひ僕にご連絡を。――失礼します」
彼らしからぬ本心の読めない笑みを残して、私たちのもとを離れる新町さん。
彼はほどなくして玄関を出て行ったが、ひりついた空気だけが、未だに廊下に漂っている気がする。
無言で立ち尽くす遼河さんになんと声をかけるべきか悩んでいると、遼河さんの目が私を捉える。そのままゆっくり近づいてきた彼が、私を壁の方へ追い詰める。
やがて背中に固い感触がぶつかると、遼河さんは身を屈めて私の肩口にそっと顔を埋めた。
「遼河さん……?」
声をかけると、静かなため息が聞こえた。
「あまり新町の前で隙を見せるな」
「えっ?」
「あいつは悪い奴ではないが、そういう問題じゃない。――寄りかかりたいなら、俺にしろ」