愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 一気に体温が上がって、触れているやわらかな感触と、高鳴る心臓の音だけに意識を支配される。

 遼河さん、どうしてキスなんて……?

 目を閉じることもできずにただじっとしていると、彼はゆっくり唇を離し、眩しいものを見るように目を細め、私を見つめる。

「きみは俺のものだと他人には主張できなくても、せめて……ふたりでいる時はそう思わせてくれ」

 切実な声音でそう言った彼は、再び顔を傾け、私に唇を寄せる。

 戸惑いもあったけれど、今度は流されるだけでなく、自分の意思で目を閉じ、彼の口づけを受け止めた。

 遼河さんの香りに包まれて重なる唇は熱く、加速する鼓動が胸を苦しくさせる。

 このキスの意味を、彼はハッキリとは語らない。それが狡いような気もしたけれど、こちらから尋ねる勇気もなかった。

「小雪……」

 今は、こうして私の名前を呼ぶ彼の声に、少しの熱を感じられるだけでいい。

 ……臆病者で、ごめんなさい。

 胸の内でそう呟くと、胸の痛みを麻痺させたくて、繰り返されるキスの甘さだけに意識を集中させた。


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