愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「だろ? 乗り心地の良さは申し分ないから、今の課題は充電時間だ。競合他社でも新型バッテリーの開発を急いでいるが、現在氷室エナジーで開発している製品は、あらゆるスペックで他社の上を行く。世界各国を驚かせることができるはずだ」
揺るがぬ自信を滲ませながら会社のビジョンを語る彼に、惚れ惚れしてしまう。
それと同時に、助手席に乗っているのが自分のような人間でいいのだろうかと、つい弱気な自分が顔を出しそうになる。
でも、せっかくのデートなのにそんな気分でいるのはもったいない。今日は周囲に比べる相手もいないんだから、自惚れたっていいはず。
自分を奮い立たせるようにそう思い、笑顔を作る。
「子どもの頃に夢見ていたような未来がもうそこまで来ているようで、なんだかワクワクしますね」
「ああ。すぐにとはいかないが、空飛ぶ車の開発も絵に描いた餅ではない時代が来ている。商品化が実現したら、蝶の名前よりも鳥の名前を付けた方がいいかもな」
「ふふっ。そうですね」
氷室エナジーの車が空を駆ける姿を想像しながら、窓の向こうに広がる青空を眺める。
何羽かの白い鳥が、雲の間をゆったりと羽ばたいていた。