愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
海辺のカフェでランチ休憩を取った後、私たちはヴィラに一度車を置いて、すぐそばの砂浜にやってきた。
海水浴にはまだ早いけれど、波の音を聞きながら光る水平線を眺めているだけで、心がとても穏やかになる。
浅瀬で貝を拾う家族連れや、沖の方で器用に波に乗るサーファー、大型犬を散歩させている人たちの姿などもあり、のどかな休日の雰囲気を堪能する。
「小雪」
もう少し海の方へ近づこうと足を踏み出したその時、遼河さんに呼ばれて振り返る。
その瞬間、彼のかざしたスマホからシャッターの音が聞こえた。
不意打ちだったので絶対変な顔をしている自信があって、思わず彼に尋ねる。
「もしかして写真撮りました……?」
「いいだろ。俺以外誰も見ない」
「だ、だとしても髪とか整えたいので予告してから撮ってください」
「……わかったよ」
遼河さんが苦笑して、スマホをポケットにしまう。今撮ったものを消してくれるつもりはないらしい。
彼のスマホのカメラロールに自分の写真が収められていると思うと恥ずかしいけれど、嫌な気はしなかった。
「もう少し歩いたら、ヴィラに行くか」
「はい」
遼河さんが手を差し伸べてくれたので、私はそこに自分の手を重ね、ふたりでゆっくり歩き出す。
お互いに口数が多い方ではないけれど、時折目を合わせて微笑むだけで幸せだった。